出版社コメント情報
小花美月の長年の夢。それは、自分のパティスリーを開くこと。そして、その夢は叶った直後に消えた。祖父母の住んでいた古民家をリノベーションし、バティスリーを開店したものの固定客のひとりだった「教えたがりおじさん」につきまとわれて、開業資金を回収する前に撤退に追い込まれたのだ。虚無感を抱えたまま、近江八幡にやってきた美月に、お堀の船の船頭が一枚のパンフレットを手渡す。川のほとりにあるホテル・ヴォーリズのレストランが、シェアキッチンとして開かれているのだという。かつて祖父母とともにオーベルジュ(泊まれるレストラン)だったころのこの店に来たことがあった美月は、シェアキッチンでの再起を図る。そして、ひょんなことからホテル・ヴォーリズで働くことになった美月はそこで、一日だけの夢を叶えるためにやってくる様々な事情を抱えた人たちと出会い--。失敗をして人生に迷う人々が、シェアキッチンを利用して自分の夢を叶え、自分の道や望み、愛を発見する連作短編集。