出版社コメント情報
故郷をおんでて何十年、他国に流離で十何年、親も夫も子も危機で、死と老いと病とが降りかかる。それでも生き抜く伊藤しろみ。この苦が、あの苦が、すべて抜けていきますように。本書は詩であり、語り物であり、また、すべての苦労する女たちへの道しるべである。単行本未収録とげ抜きスケッチ2篇を巻末収録。〈目次〉伊藤日本に帰り、絶体絶命に陥る事母に連れられて、岩の坂から巣鴨に向かう事渡海して、桃を投げつつよもつひら坂を越える事投げつけた桃は腐り、伊藤は獣心を取り戻す事人外の瘴気いよいよ強く、白昼地蔵に出遇う事道行きして、病者ゆやゆよんと湯田温泉に詣でる事舌切らず、雀は婆を追い遣る事梅雨明けず、母は断末魔に四苦八苦する事ポータラカ西を向き、粛々と咲いて萎む事鵜飼に往来の利益を聴きとる事耳よ。おぬしは聴くべし。溲瓶のなかの音のさびしさを。の事秋晴れに浦島の煙立ち昇る事瘤とり終に鬼に遇い、雀の信女は群れ集う事伊藤ふたたび絶体絶命、子ゆえの闇をひた走る事とげ抜きの信女絶望に駆られて夫を襲う事良い死に方悪い死に方、詩人は死を凝視める事伊藤病んで、鳥花に変じ、巨木はべつに何にも変わらぬ事あい子地蔵の火に触れる事山姥の灯を吹き消すやハロウィーンの事