出版社コメント情報
鎌倉・南北朝時代の美術の新しい地平王朝文化が華開いた平安時代が終わり、武士が台頭、新たな仏教の宗派も隆盛を誇ります。庶民、職人といった階層も存在感を増した時代が鎌倉・南北朝時代です。旧来の勢力に加えて、この多様な階層の出現は、美術作品にも影響を与えます。平安から続く絵巻には、武士や争乱が描かれ、さらには現実の風景に宗教的な幻想を重ね合わせたかのような作品や職人が描かれたものまで制作されました。そして、この時代における美術のもうひとつのハイライトは「肖像画」です。前代までは、ごく限られた僧侶の肖像画がほとんどでしたが、鳥羽、崇徳、後白河、そして後醍醐などの天皇や上皇、武士では、人物特定をめぐって何かと話題の源頼朝のほか、平重盛、藤原光能など時代の権力者の肖像が描かれるようになりました。さらには、今までの美術全集ではほとんど取り上げられることのなかった当時の地図、つまり古絵図を掲載します。そのほかにも、時代を特徴付ける仏画や生々しい手印が押された書跡、刀剣や甲冑などの武具に蒔絵、金属工芸などを通じて、鎌倉南北朝期の人々の美意識、人間観、世界観をあきらかにします。