出版社コメント情報
"継子いじめ物語の先駆作と恋愛の諸相を描いた十篇の短編物語集。清少納言も楽しんで読んだという『落窪物語』は,娯楽に徹した平安時代の継子いじめ譚。継母から落ちくぼんだ部屋をあてがわれ、「落窪の君」とあだ名された姫君が,美しさと心根の優しさで貴公子の愛をつかむ筋立てはシンデレラ物語そのものだが、本書のほうがペローやグリム童話より七、八百年も前に成立している。しかも魔法に頼らず、どこまでも現実的な描写は説得力に富み,待女あこぎの活躍や貴公子による継母への復讐戦なども痛快である。最後まで底意地の悪さを発揮する継母は滑稽ですらあるが、いまだにいじめの問題から解放されずにいる現代人の陰画ともみえる。『堤中納言物語』は、平安後期以降の成立といわれる十編の短編物語集。他愛ない恋にはじまって,浮気や人違い、一風変わった姫君に起きた恋愛騒動や、遂げられぬ恋愛の悩みなど、恋の諸相が各編に描かれる。"