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ウィーン・フィルの名コンサートマスターとして一世を風靡した著者が、その80年あまりの人生を振り返った自伝である。特に注目すべきは、著者がコンサートマスターに就任直後の、戦時下から戦後の復興時期にかけてのウィーン・フィルの状況がオーケストラの内部から、かつてなかったほどの生々しい描写をもって語られている点であろう。四重奏団としてのただ一度の来日(1957年)の際の日本の聴衆の熱狂ぶりも記述されている。90年代に米ウェストミンスターより数多く復刻された「バリリ四重奏団」の録音によっても、著者バリリは世代を越える人気をもっており、同時期に活躍したオットー・シュトラッサー著の『栄光のウィーン・フィル』(弊社刊)が絶版となっている現在、ウィーン・フィル・ファンにも非常に興味ある一冊となろう。 全編にわたり著者所蔵の貴重な写真を数多く収めた。