出版社コメント情報
妻ががんで逝った。61歳、1年あまりの闘病生活ののちの早すぎる死だった。家族が悲しみ、うろたえるなか、妻は、嘆かず恨まず、泰然【ルビ たいぜん】と死んでいった。それはまさに「あっぱれな最期」だった。決して人格者でもなかった妻が、なぜそのような最期を迎えられたのか。そんな疑問を抱いていた私が出会ったのは、「菫ほどな小さき人に生まれたし」という漱石の句だった。そうか、妻は生涯「小さき人」であろうとしたのか--。妻の人生を振り返りながら古今東西の文学・哲学を渉猟【ルビ しようりよう】し、よく死ぬための生き方を問う、珠玉の一冊。