出版社コメント情報
勝つのは生者か、死者か この手で殺した、かつての親友が握る謎のメッセージ。 笑顔の裏に刃(やいば)を秘めた、女の戦いに終わりはない──。 智恵と洞察の火花が飛ぶ ベストセラーミステリー! 〈著者のことば〉 当然の話かもしれませんが、被害者のことを最も考えているのは、犯人です。それは、被害者が被害者になる、つまり死んでしまってからも変わりません。 被害者の方にも、生前から犯人への強い思いがあったのなら、それは死してなお変わらないでしょう。 本作では、そんな犯人と被害者との、誰よりも濃い関係を描いてみました。あなたは、どちらの立場で読まれるでしょうか。 〈わたしは、彼女に勝ったはずだ。それなのに、なぜ……〉 中条夏子(なかじょうなつこ)は、かつての同僚で親友だった黒羽姫乃(くろはひめの)を刺殺した。 舞台は、旧知の経営者らが集まる「箱根会(はこねかい)」の夜。 愛した男の命を奪った女の抹殺は、正当な行為だと信じて。 完璧な証拠隠滅。夏子には捜査から逃れられる自信があった。 さらに、死体の握る“カフスボタン”が疑いを予想外の人物に向けた。 死の直前にとった被害者の行動が呼ぶ、小さな不協和音。 平静を装(よそお)う夏子を、参加者の一人である碓氷優佳(うすいゆか)が見つめていた。 やがて浮かぶ、旧友の思いがけない素顔とは?