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わかるんだよ。刑事にはわからなくてもな。R県警の機関誌編集を担当する事務職員・山名悦子は、定年退職者全員による回想手記の特集に、ひとり分だけ原稿が手元にないことに気付く。二十九年間、留置場の看守として警察人生を歩んできたF署の近藤宮男だけが原稿を寄越していないらしい。すぐに悦子は近藤の自宅に向うが、「捜査」で外出しているという。「穴蔵刑事が穴蔵から出てきちゃった」と近藤の妻は笑うのだが……死体無き殺人事件の「捜査」に、元看守は自らの勘に賭けた――表題作ほか、「人生の瞬間」を緊迫の筆致で描く、六編の人間ドラマ。これぞ横山ミステリーの醍醐味、新書判で登場。