出版社コメント情報
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)はトラウマ(心的外傷)ケアに有効とされています。しかし著者サンドラ・ポールセン博士は、トラウマに加え解離症状もあるクライエントの場合、EMDRの標準的な手順では治療に行き詰まりがちなことに気づきました。その解決策として、彼女はジョン・ワトキンズ博士が開発した自我状態療法とEMDRを組み合わせた手順を構築し、その治療効果は広く注目されるところとなりました。本書は、この治療手順をわかりやすく解説するために、著者自身によるオリジナルなイラストを添えて作られたものです。
ポールセン博士は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に際しては、悪夢やフラッシュバック、それらの引き金となる出来事を避けるといったPTSD特有の症状だけでなく、時の感覚の喪失や健忘など、解離性障害の症状の有無の確認を行うように強く勧めています。
そのため本書では、解離症状に対する“構造化されたアセスメントと治療の手順”が紹介されます。それらの実施によって治療中に陥りがちな交代人格が増えていくという問題を防ぐことができるようになります。
この日本語版では、一層のわかりやすさを心がけ、巻末に和英併記のさくいんを加えました。本書が関係者の理解と研究、そして効果的な治療に役立つことを願っています。
本書は主として2つのグループ ―― (1)心的外傷(トラウマ)を負った方と接するメンタルヘルスの専門家 (2)トラウマや解離症状があると思われる人やその家族や友人がいる一般の人々――のために書かれています。(1)の読者に対しては、「眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)」の実施と関連づけ、その治療に役立つように構成されています。EMDRを行わない臨床心理士や医師は必ずしも本書の主要な読者でないかもしれませんが、トラウマが引き起こす諸症状を治療する作業(トラウマワーク)の準備をする際、治療者にとっても治療を施されるクライエントにとっても役に立つように書かれています。 治療の過程でクライエントにみせて概念を理解できるように、多くのイラストが添えられています。また、さらに詳しい情報を求める読者のために、「関連する概念」のキーワードをリストしています。