出版社コメント情報
16年にわたる「女帝」の政治がもたらした負の遺産。 世界が混迷を深めるなか、“欧州の巨人”はどこに向かうのか?そして日本は何を学ぶのか? リーマンショック、欧州債務危機、その後の強力な経済成長、パンデミック危機……これらの期間(同国史上最長の16年)を通じドイツを率いたアンゲラ・メルケル首相。大きな危機をたびたび「食う」ことで地盤を固めてきた「女帝」とも「鉄の女」とも称される彼女は、EUやユーロ圏の礎を築いた政治家の1人であり、世界の政治史に名を残す傑物といえる。そのメルケルがいよいよ政治の世界を去る。首相在任中にドイツは「病人」と呼ばれた状況から復活し、経済は際立った安定を実現、域内での政治的発言力ではフランスを突き放した。だが「強いにもかかわらず他者のことを考えない」姿ばかりが注目され、尊敬や信頼を勝ち得たわけではない。域内には不公平感が募り、亀裂が生じていったのだ。 では、次のリーダーはこうした亀裂を癒していけるのか? そのリーダーを決める2021年9月の総選挙は二大政党の激しい接戦となり、これから政権づくりへ向けた連立交渉が加速する。新政権確立にはまだまだ予断を許さず、その先の展望も難しい。 本書は、日本を代表するマーケット・エコノミストの1人で、欧州に対する造詣の深い筆者が、メルケル引退をEU史における1つの節目と捉え、過去を総括し、現状を整理した上で、未来を展望するもの。「欧州の病人」と呼ばれたシュレーダー政権は抜本的な改革により、次のメルケル政権にしっかりその果実を引き渡した。では、メルケル政権は次の時代に向けて何らかの果実を残せたのか。それとも残ったのは負債だったのだろうか。さらに、日本は何を学び、これからをどう考えるべきか。「メルケルなきドイツ」「メルケルなきEU」を展望し、初の離脱国を迎え岐路に立たされているEUに鋭く切り込む。