おいしいがいっぱい。つきぢ田村の三代目が書き下ろす、おいしさいっぱいの料理エッセイ。客の「おいしい」の一言を得るためだけに食の伝統を追い求め、新しい器へと冒険を重ねる奇跡の料理人が、よりどころとなる素材や調理法など、食にまつわるさまざまなエピソードを披露しながら、名店が築きあげてきた心意気をつづっていく。好評の前作『隠し包丁』から7年、今回は一日一品一ページ、うまいものだけ一年分を文章でたっぷりご賞味いただくという趣向である。たとえば盛り付け。盛り付けの基本は、「丸い皿に四角く盛る」「四角い皿に丸く盛る」こと。これで器も料理も引き立つ。器は、料理を盛るものだが、同時に吉や福を盛るものだとも著者は言う。もうひとつ、簡単なゆで卵の作り方。たかがゆで卵、されどゆで卵。ふっくらとろっとしたミディアムレアなゆで卵をつくるには、鍋に水をいれ、卵を入れてから火をつける。沸騰してきたら火を止め、ふたを閉めずに冷めるまで置いてから皮をむくと……。食の真髄を心ゆくまで味わうことのできる一冊。

「おいしい」の一言を得るために食の伝統を追い求める料理人が、素材や調理法などを１日１頁でつづった現場からの奮戦記。