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いつの時代も世界中の至るところで「祈り」が捧げられている。その前には、あたかも試練であるかのように、何か大きな力が立ち塞がる。著者待望の書き下ろし新作は、もしもガルシア=マルケスが『カラマーゾフの兄弟』のような物語を姉妹に置き換えて書いたら? というのが発想のきっかけとされる。
海と火山に囲まれた、小さな島の小さな町・ウィルヴィル。その町の権力者の三人娘をめぐり、「奇妙な冒険」が物語られてゆく──欲望や愛憎や裏切りが渦巻く、著者渾身のブラック・ファンタジー群像劇。
この作品は、〈蜷川幸雄御大との「演出バトル」というウリで立ち上がった興行だ。現場での台本は、俺バージョン・蜷川バージョン共通で、まったく同じモノが渡された。演出の差異を楽しんでいただくのが主旨であるとするなら当然のことであり、ト書きも、選択肢を増やせるよう、いつもよりボカして書いたところが多い。[……]本書は、自分が演出する過程で現れた具体性を、ある程度ト書きに落とし込んだ、KERAバージョンの戯曲だと思っていただきとうござる〉(本書「あとがき」より)。
上演時間は四時間をゆうに超える破格の戯曲を、ぜひとも味読あれ。