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「中村屋のボース」で知られるインド独立運動の闘士R・B・ボース。駐留先のバンコクからの手紙で、「英米を完全に粉砕しなければならない。何年かかっても、我々は両国の壊滅まで戦ってゆきます」と決意を述べた革命家は、病に倒れ、日本に帰国した。
そして一九四五年、今際の際に娘に語った言葉は、「平凡に暮らせよ」だった。
インドをイギリスの支配から解き放つため、英国総督に爆弾を投げつけ、官憲に追われる身となったボースは、一九一五年、日本に亡命。アジアを西欧の侵略から解放するという大義のもと、「大東亜」戦争の開戦に踏み切った日本帝国と、運命をともにした。
しかしその一方で、日本人の妻、俊子との間にもうけた子供たちを愛する、磊落な家庭人という知られざる側面も見せていた。
本書では、同志の在日インド人や頭山満との関係、家族に見せる父親の顔など、娘の目に映じたもう一つの姿が明かされる。昭和の激動期を懸命に生きた一人の女性の記録として、また相馬黒光や新宿中村屋をめぐる文化史としても、重要な回想記。貴重な写真多数収録。