出版社コメント情報
第五冊は蛍巻~藤裏葉巻。源氏三十六歳の五月から三十九歳の十月までの出来事。源氏に恋情をほのめかされ、戸惑いを隠せない玉鬘。その美しさは多くの貴公子たちを魅了し求婚を受けるが、彼女を得たのは、何と鬚黒の大将であった。一方夕霧と雲居の雁との幼な恋もようやく内大臣の許すところとなる。源氏は准太政天皇の地位にのぼりつめ、帝と朱雀院の六条院への行幸という、この上ない栄誉に世の注目を浴びる。巻末の論文では物語の地の文において、語り手(作者)が直接発言するなど、読者を意識した姿勢が認められる「草子地」と呼ばれる表現について論じる。『源氏物語』は他の物語文学に比して非常に豊かな草子地表現が見られるため、草子地についての知識を深めると、よりいっそう『正訳源氏』の世界を堪能することができる。