出版社コメント情報
日本の生んだ独創的思想家の一人といわれる中井正一(1900-52)のメディア論を、まず彼の弁証法の「媒介」概念理解から解き明かす。特に京大での恩師深田康算の美学からの影響、及び中井の在学・在職当時京大で影響力のあった西田幾多郎・田辺元の弁証法理解への批判、あるいは三木清、久野収などの先輩・友人との交流から考える。さらに、戦前の映画作りの経験を踏まえた独自の美学の構築や、同人誌を通じての運動、戦後国立国会図書館初代副館長として官庁資料の組織化の経験など、彼のメディアについての実践を、上記の理論面での理解に照らし合わせ、中井の弁証法理解の揺れのもつ現代的意義を探る。