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なぜ近年急激にメンタル休職が増えているのだろうか? なぜうつ病はこんなに増えたのだろうか? こういった素朴な疑問を調べているうちに、いかに製薬会社の行う「うつ病の啓発活動」が、結果的に世界のうつ病診療に影響を与えたかを知った。精神科医という仕事柄、製薬会社のプロモーション活動には気づいていたが、これほど強い影響力があるとは正直知らなかった。最近、欧米では製薬会社によって行われる啓発活動の影響について盛んに議論されている。「病気作り」という批判の言葉さえ生まれてきているのだ。しかし日本では未だ話題にもなっていない。病気の啓発活動と言われても日本人には対岸の火事のような存在なのだろう。しかし、うつ病の啓発活動は、既に日本社会に大きな影響を及ぼしている。テレビのコマーシャル、病気の啓発サイト、病気の市民講演会と様々な機会を利用してじわじわと染み込んでいる。あまりにも社会に溶け込んでいるので、逆に気がつきにくいだけなのだ。患者も、医療者も、こういう現象が既に起きていることを認識する必要がある。本書をきっかけに、現在のうつ病問題を理解し、うつ病診療を向上させる一助としていただきたい。