出版社コメント情報
1945年5月、ドイツ〈第三帝国〉の最後の一週間が始まった。ヒトラーは死んだが、戦争は終わらない。すべてが静止状態に陥っているように見えて実はすべてが息もつかせぬ激しい動きをしている。ヒトラーの後継者に指名されたデーニッツの〈業務遂行政府〉がデンマーク国境に近いフレンスブルクに退避するなか、連合国軍部隊は絶えず前進を続ける。ベルリンはソ連軍によって陥落、イタリアのドイツ軍は先んじて降伏した。ミサイル研究者は逮捕され、女優ディートリヒは米兵として“帰還”して姉を探していた。連鎖する自殺、無数の強姦事件、ドイツ人への暴力的で復讐的な追放、地下に潜ろうとするナチ高官、収容所からの「死の行進」――すべてが、エーリヒ・ケストナーが1945年5月7日に日記に記したところの「〈もはやないもの〉と〈まだ来ないもの〉のあいだの空白」に属していた。著名なジャーナリストでありヒトラーの伝記作者でもあるフォルカー・ウルリヒは、多くの歴史的証言・記録の断片のモザイクから、どんなスリラー小説よりも読む人の心を鷲掴みにする現代史のパノラマを作り上げた。