出版社コメント情報
本書の目的は、子ども社会と大人社会をつなぐ接点に位置づけられる「学力問題」について、「マイノリティと階層」の視点から考察することにある。 具体的には、一方では、日本に固有のマイノリティである同和地区(被差別部落)の児童生徒の低学力問題が取り上げられ、他方では、成人の知識・能力の階層差の問題が取り上げられる。前者については、たとえば同和地区の子どもたちが小学生から中学生になっていく過程で学力を低下させているのはなぜか、後者については、たとえば中学時代の学業成績が成人後の知識・技能の階層差にどんな影響を与えているか、を実証的データの分析によって究明しようとしている。 本書は、同和地区児童生徒の低学力の規定要因や3R'sのような基礎的な知識・技能を規定する階層的要因を明らかにしようとする試みを通じて、「誰にも基礎学力を」(基礎学力の格差を小さくせよ)という義務教育の公共的理念の再興を訴えるものである。