出版社コメント情報
本書は、世界経済の戦後体制下の1960・70年代に注目を浴びた南北問題が、現在なぜ歴史の表舞台から姿を消したのかという問題意識から出発して次のような独創的な分析と実証を通じて「南北問題の原因と本質」の解明によって世界経済の姿を丹念に描き出している。 第1に、戦後世界貿易構造の変遷と第3世界の世界に占める地位を、UNCTAD資料に基づいて分析し、世界経済が南南問題を生み出し、南北問題を複雑化させているというレギュラシオン理論の命題を実証・彫琢している。第2に、プレビッシュの問題提起を受け止めて、新古典派、マルクス派、ネオ・リカード派の貿易理論を批判的に検討し、世界市場における価格決定プロセスを明らかにしている。第3に、第2の理論的整理を踏まえ、対等の国家関係ではなく、国民権力の角逐下にある世界貿易における価格決定プロセスについて、ソーニとディ・ピエトロのバーゲニング・パワー概念およびホプキンスとウォーラーステインのグローバル商品連鎖(GCCs)論を用いて明らかにしている。第4に、第3の結論をさらに詳細に裏付けるために、日本の輸出入に関するアンケート調査を行い、GCCs論の妥当性を実証すると共に日本の貿易財の価格形成の実態を浮き彫りにしている。 本書は、このような理論的・実証的分析を通じて「南北問題の原因と本質」の解明に迫ろうとしており、今までの南北問題に関する「政治・経済的論争」を総括するものとして、世界経済および南北問題をとらえるうえで、必読の文献である。