出版社コメント情報
教師たちの「教える」という仕事の実際とそこに生まれる教員社会とは、「見果てぬ暗黒大陸」の比喩もあるように、複雑で見えづらい性質を持っている。本書はその世界の実態や機微に迫るため「教員文化」と「(その)日本的特性」というコンセプトを設定している。教員文化は、教師たちの仕事とアイデンティティが直面する共通の困難・課題を何とか乗り切るべく、長年の間に形成・継承・再編してきた独特の行動様式(職業文化)である。 その日本的特性としては「生真面目さ」「献身的教師像」等が指摘されて来たが、1部の教師アンケート分析は80・90年代と比較して今の教師たちに「私事化意識拡大」「バーンアウト減少」等の新たな変動が見られることを指摘し、教職倫理を含む教員文化の新動向を解明している。2部は戦後の代表的実践家3人のライフヒストリーを追跡し、教育実践の志向・力量の形成・発展・再編がいかに教員文化的要素・様相と絡み合い、時代とともに展開するかを探究した。また「教え子」という言葉に象徴される教師=生徒関係のとり方、学級のつくり方があるが、3部では20世紀初頭(学校制度確立期)の一教師の日記分析から「教え子主義」の原型形成の姿を追究している。 「教育困難と改革」の現代に教員社会・文化の変動の意味を浮かび上がらせる一冊である。