出版社コメント情報
植民地化や内戦によって絶対的弱者の立場に置かれた国は、いかにして自己の主体性を回復できるのか。それは可能なことなのか。本書は、近代ベトナム100年の歴史において、政治体制の転換が高等教育政策・制度の形成にどのような影響を与えてきたかを検証したものである。フランスによる植民地化、旧北ベトナム独立後の社会主義化、旧南ベトナムにおける軍事独裁、南北統一後の社会主義化、そして1980年代後半から始まった市場経済化など、20世紀のベトナムは様々な政治体制の転換・変化を経験してきた。それぞれの政治体制には特定の外国が大きな影響力を及ぼし、高等教育においても特定国の外国教育モデル(フランス、旧ソビエト連邦、旧アメリカなど)が優勢を誇ってきた。これらの外国教育モデルはベトナムにどのように導入・受容され、これに対してベトナム政府・人々はどのように反応したのだろうか。また、各モデルはどのように競合あるいは共存したのか。現在のベトナム高等教育のルーツはどこにあるのか。そして、大学生100万人時代を迎えた今日、ベトナム高等教育はどこに向かおうとしているのだろうか。 本書では、時間軸を一定にして空間比較を行う「共時比較」と、時間の推移による変容過程を検証する「通時比較」の2つの方法を用いて、これらの課題を縦横に分析する。