出版社コメント情報
自閉症児の身体運動面の問題は、自閉症を特徴づける主要な問題とはされていない。しかし、旧来より乳児期の「はいはい」などの動作に異常のあることや身体の不器用さが観察されるなど、自閉症児には運動に関連する多様な問題が顕在するという認識が一般的となっている。また、運動に関して、発達的視点から取り組んだ研究は世界的にも殆ど見受けられない現状にある。 本書では、まず、自閉症児の運動発達を経年的に探るため、長期間にわたって継続的に取り組んできた運動検査のデータをもとに、その発達的変化について検討した。そして、言語や認知、運動等の人間の行動と脳機能との関わりを検討していく神経心理学の立場から、これまでとは異なる評価方法を検討し、その指標をもとに、自閉症児の運動特徴について多面的に考察した。さらに、多様な遊具環境を利用したムーブメント教育法にもとづく指導事例から、自閉症児の運動発達支援の在り方を模索し、まとめと提言を行った。 本書が、自閉症児の発達支援や、養護学校の教育カリキュラムの作成等に少しでも役立ってくれることを願う。