1949年、毛沢東は新しい社会主義中国の建国に着手した。「現代国家」への挑戦がはじまったのである。その後、中国が国際社会から注目を浴びる出来事は数多く存在している。だが、直近の数年間ほど中国が国際社会の最重要なプレイヤーとして着目されたことはなかった。中国を正しく理解することの重要性が明らかに格段に増している。本書は、中国を理解するための枠組みの提示を試みたものである。それは、中国式開発モデルであり、指導者と民衆、中央と地方、国有と民有の間に繰り広げられる諸現象を記述し適切に分析する枠組みを意味している。また同時に、国際社会において大きな存在を標すこととなった中国は、国際関係等外的諸要因を開発モデルの不可欠な構成要素として導入する必要があり、様々な「外圧」への対処を迫られることとなった。中国を取り巻く国際関係を理解する適切な枠組みの提示が、本書のもうひとつの目的である。そうした諸目的のもとに、本書は、中国式開発モデルを観察するに際して、中国全体の体制的特徴に由来する「一般性」のみでなく、様々な地域の具体的実践から見出せる「特殊性」を重視するというスタンスにもとづいて編まれている。本書をとおして読者は、過度に楽観的な中国台頭論も過度に悲観的な中国崩壊論もはなはだ危険であること、そして改良主義の価値を取り戻し自己救済の道を歩みはじめた中国の今後を、より冷静にそしてより客観的に観察する道標を手に入れることが可能となるだろう。