出版社コメント情報
日本では、延命治療拒否に関する正確な情報不足、「尊厳死」を「安楽死」と捉えるといった誤った認識、緩和治療の本来の目的の周知不足などにより、末期病患者の尊厳を守るためのリビングウィルが未だに認知されていない状況が続いている。リビングウィルは残りごくわずかな命を人間らしく自然に全うしたいと願う、患者の大切な意思表明の手段である。この患者の人権を守るべき書類を作成するという行為が、正しい啓発活動の欠如により国民から支持を得られないまま、尊厳死に関する有識者たちの議論が結論を見ない現状は、打破する必要があるであろう。アメリカでは、1976年のクインラン判決で、生命維持装置拒否の権利が認められて以降、さまざまな合憲判決や法律の制定によって患者の自己決定が広く認められてきた。本著では、こうしたアメリカにおける約40年にわたる延命治療拒否の歴史的な流れを検証した。これは、日本における今後の終末期医療のあるべき姿を決定する上で大いに参考になるであろう。本書では、カリフォルニア州のリビングウィル(アドバンス・ディレクティブ)の書式を日本語に翻訳すると共に、アメリカ法曹協会発行の「ヘルスケア事前計画のためのツールキット」を日本語に訳して掲載した。また、今後クローズアップされるであろう「心肺蘇生拒否書(DNR)」も掲載した。この拒否書は、心拍や呼吸が停止した場合には、救急隊等による呼吸や心機能を再起動させるための医学的処置の実施を望まない、ということを表明するためのものである。本著では、カリフォルニア救急医療サービス(EMS)がカリフォルニア医学学会と共同作成した拒否書を日本語に訳して掲載している。これらの本邦初日本語完全訳の資料は、「終末期における自己決定」を考える人たちへの指針として大いに役立つことであろう。