出版社コメント情報
瀧川鯉昇はそのたたずまいで笑いを誘うことのできる稀有な落語家である。近年の落語人気の中、一見地味に見えるこの人の価値がようやく落語ファン全体に浸透してきたようだ。年齢的には中堅からベテランの域にさしかかるところであるが、この人の会には多くの落語に精通したファンがつめかける。じっくりと人気をため込んできて、ようやく花が開いたと言えよう。鯉昇は飄々とした空気で袖から登場し、高座に座ってもなかなかしゃべり始めない。その間にも客席からは師の忘れにくい顔と表情そしてそれからの一言を期待し、くすくす笑いがさざ波のように広がってゆくのだ。まさに映像向きの落語家と言える存在である。