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米ソ間の中距離核戦力(INF)削減交渉に対し,中曽根内閣がとった外交政策や交渉妥結の方向が規定されるまでの過程を明らかにする。首脳外交の裏側で,首相以外の閣僚や外交当局者がアジア部のSS-20問題についてどのように考え,対応を検討したのか。日米間の核軍縮に関する生産的協議を可能にさせた当時の国際情勢や時代背景はどのようなものであったのか。一次資料の解析と当事者証言の分析に基づいて,当時の外務省と防衛庁の問題認識を含め,日本政府のSS-20に関する政策形成過程を検討し,その全体像を描き出す。本書は,米国が日本に提供し続ける拡大抑止の信頼性をどのように維持していくのかという戦略問題を考察する上でも,重要な歴史研究であるといえる。