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2013年、イギリスが国家プロジェクトとして作った最初の完全な中世ラテン語辞書が完成した。このプロジェクトが始動したのは第一次世界大戦が始まる前年の1913年。以来、戦争の混乱の中でも辞書プロジェクトは途切れることなく細々と続いてきた。言語集め(ワードハント)には数多くのボランティアが参加。完成した中世ラテン語辞書は英国辞書作史の到達点ともいえる。ボランティアたちは生きている間に辞書が完成するとは考えていなかったが、なぜここまで精力を傾けたのか。辞書編集に関わった人々を訪ね歩き、後世に残る仕事に取り組むことの困難と喜びを追ったノンフィクション。後半では、日本人で辞書作りという特殊な仕事に携わった人々の話を通じて言葉を伝えていくという仕事を追体験。また、識者とともに漢文、アイヌ語、バベルの塔、シェイクスピアといった言葉にまつわる話題を追いながら、日本社会のなかで「100年かけてやる仕事」のもつ意義について改めて考える。