出版社コメント情報
(橋本博史先生「発刊にあたって」より抜粋)順天堂大学膠原病内科学教室では,膠原病で亡くなられ剖検された症例を平成15年よりModern Physician(新興医学出版社)に連載いたしました.この本は,それらを一冊にまとめたものです.また,当教室では,昭和63年に現名誉教授の塩川優一先生の御退職記念事業の一環としてそれまでの膠原病剖検症例をまとめ金原出版より「膠原病臨床から病理への展開」と題し著書を発刊しています.この本は,その続編ともいえます.当教室は,昭和44年に塩川先生によって日本ではじめて膠原病内科を標榜した講座ですが,当時は比較的稀とされた膠原病の患者様も数多く受診されていました.生命予後は必ずしも良好とはいえず,不幸な転帰をとられる方も少なくなく,剖検させていただいた症例はほぼすべて症例報告の対象となっていました.最近では,診断技術の進歩と治療法の発達により予後良好で慢性に経過する疾患へと変貌し,剖検する機会も減少する傾向にあります.また,治療や加齢による修飾により必ずしも膠原病の古典的な病理所見がみられるわけではなく,診断技術の進歩による生前の病態診断もある程度可能となり,剖検すること自体の有用性も薄れてきているようにも思います.しかしながら,いつの時代においても,剖検された膠原病の症例を通して学び得たことに計り知れないものがあります.膠原病の予後の改善がみられるものの,重篤で難治性病態により亡くなられた方の剖検例を病理組織学的な解析を加え記録に留めておくことは極めて重要と思われます.これは膠原病とその病態を理解する上で必須であるからです.巻末に,順天堂大学に於ける当教室の剖検例数の年代別推移を示しましたが,全体的に剖検数の減少がみられるものの,その中にあって膠原病の占める割合が高い傾向にあることがわかります.