出版社コメント情報
序 文】 エゼチミブがアメリカの旧Schering-Plough社のDavis HRらにより発見され たのが1994年である。Davis HRは、私のシカゴ大学留学時代の友人であり、い ち早くその発見を聞いた。そして、2002年にドイツで市販されたが、その作用 メカニズムであるコレステロール吸収阻害の分子メカニズムが分からないまま であった。Davis HRには、メカニズムの分からない薬剤は使いにくいと苦言を 呈したのを覚えている。そして、2004年についに、その分子標的であるNiemann -Pick C1-Like 1(NPC1L1)という蛋白が同定されたのである。その努力に敬 意を払いたい。そして、我が国でもついに2007年に「ゼチーア?」として発売と なり、今年で5周年を迎えた。スタチンとは異なる機序ということで、一躍注目 の的となった。スタチンとの併用により、強力なLDLコレステロール低下を目的 とした使用法が中心となった。それはそれとして、我が国では盛んにLDLコレス テロール低下作用以外の新たな作用が基礎的・臨床的なレベルで検討が進み、 インスリン抵抗性改善作用、脂肪肝抑制作用など、動脈硬化発症の根幹にもか かわる良い作用を示す可能性が示されるようになった。そして、待望の治療エ ビデンスであるStudy of Heart and Renal Protection(SHARP)試験が2010年 に発表されるにおよび、ほぼ動脈硬化抑制のためには欠くことのできない薬剤 として認識されるに至っている。 本書は、まさにその歴史を詳細に示すものとして、計画された。おそらくエ ゼチミブに関して、現在知られているあらゆるレベルの知見が集積されている ものと自負しているところである。 多くの先生方の診察・研究の一助になることを切望しているところである。 2012年12月 寺本 民生