出版社コメント情報
春になると、本屋さんにはお弁当の本がたくさん並びます。同じころデパートの地下では、お花見のお弁当が百花繚乱のごとく売られるのも毎年のこと。日本人ほど弁当に手をかける民族はいないとされ、obentoは海外でも称賛の的となっています。私たちはなぜ、こんなにも弁当にこだわるのでしょう。そのルーツは、ハレとケという日本古来の世界観にあるという話を、民俗学者の神崎宣武先生にうかがいました。それは稲作中心の農耕社会におけるもので、ふだんの生活がケ、田植え祝いなどのまつりがハレ。堅実で単調なケばかりが続くと、だんだん活力が失われてきてしまうので、時々にハレを挟んで活性化したのだそうです。ハレの日は、ふだんは御法度の酒やご馳走でハメをはずすことこそが大事だったのだとか。江戸の庶民にとっては花見もれっきとしたハレの行為。だからこそありったけのご馳走を重箱に詰めて、桜の名所へと繰り出していったのですね。驚いたことに、本来は花見にも豊作祈願の意味があったのだとか。その詳細は本誌でご覧いただくことにして、ともかく、日本の習俗と食がいかに深く結びついているかをあらためて知ったことでした。