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「商品」について検討したのはマルクスが初めてではない。すでに経済学者が「商品は使用価値であるとともに交換価値をも有する」と言っていた。彼は最初にこの見解をとりあげて、「交換価値」は、商品交換社会の人々が自分たちの生産物(使用価値)に担わせた「超自然的な属性」なのだと指摘する。そして、商品の「交換価値の源泉は労働だ」という経済学者の見解に対しても、<あなた方は「商品に表わされている労働の二重性」にまったく気づかず、使用価値を生産した「種々の有用労働」と、「価値としての商品」を生産するという「抽象的な人間一般の労働・人間の労働力の支出」とを、区別せずに同一の労働として論じている>と批判する。「第一章 商品」は、経済学者との<暗黙の対話法>という独特の叙述方法による「経済学批判」なのである。マルクス主義者も反対派もこの叙述方法に気がつかないので、誤読し誤解したうえで論争を続けている。