出版社コメント情報
地球を覆うグローバリゼーションの大波が政治経済の分野に留まらず、鍼灸の世界にも打ち寄せている。いわゆる中医学の覇権主義に象徴されるような世界鍼灸の波動という黒船を迎え、日本列島に長い間伝承されてきた古典派の鍼灸(伝統鍼灸)の思想とわざは数十年後、果たしてどうなっているのだろうか。絶滅危惧種的な存在と化し、かろうじて生き延びているのだろうか。それとも、自ら世界思想を孕み世界鍼灸の中心へと飛躍しているのだろうか。 日本鍼灸が絶滅の危機を回避し世界鍼灸へと飛躍するためにはまず、「日本鍼灸とは何か」を明確に理解しなければならない。そのためのキーワードが「天人合一思想」と「自然治癒力思想」であり、この2つの思想こそ、未来鍼灸を紡ぎ出す普遍思想となりうると著者は力説する。 本書は、ベストセラー『鍼灸の挑戦』(岩波新書)を書いた著者が日本鍼灸の大転換期を迎えている時代(2006~2010年)に綴った歴史的ドキュメントである。主としてその間、週刊『あはきワールド』に連載された時事評論をまとめたものだが、各篇には紙面の許す限り脚注を付け、その見出しを巻末にキーワード索引として整理してある。 世界人類の鍼灸への関心の高まりにどう応えるか。日本鍼灸が未来に大きく展開するためには、早急に「日本鍼灸百年の計」を打ち立てなければならない。そのための議論に欠かせない資料がこの中に詰まっている。