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本書は“普通の物質の普通の性質”をはっきりさせることを第1の目標とする。そのうえで、電子間の相互作用がどのような効果を生むかを概観する。それらを構造の観点から観測した際にどう見えるか、まで記述を進める点が本書の特徴である。 本書の前半は、格子系に注目した固体物理の教科書である。直接は構造と関係しなくても、知っておく必要があることについては網羅的にふれられている。個々のステップをしっかり説明することより、構造という観点で見た時に、どのような理解が得られるかを概観することを狙った記述とした。 後半はX 線回折理論による構造観測法の解説を行う。固体物理の研究に必要な理解を得ることを目標とし、この目的のためであればほかの書籍を参照する必要がない完全性を目指した。実際に回折実験を用いて物性研究をする者が知るべき内容を示すため、試料によるX 線の吸収や多重散乱など、“汚らしい”現象についても述べる。